野村が掲げるパーパスを教えてください。
“金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する”
これが私たちのパーパスです。
パーパス策定の経緯を教えてください。
今後はますます会社の存在意義が問われる時代になるでしょう。
会社の規模を大きくする、きちんと利益を出し続ける、会社が存続していくためには大切なことです。しかし、それだけでは存在意義があるとは言えません。加えて、社員一人ひとりが「なぜこの会社で働くのか?」という問いに答えを探す時代になってきています。
「なぜこの社会において必要とされるのか?」、「どんな役割を果たしていく意思があるのか?」、私たちのパーパスの探求、パーパス・ジャーニーは、このような問いから始まりました。
当社は、2025年12月に100周年を迎えます。この大きな節目を、これまで野村を支えていただいたお客様、すべての関係者の方々に感謝の気持ちをお伝えする大切な機会にしたいと考えています。加えて、野村で働く社員一人ひとりが、自らのパーパス、つまり、「なぜ野村で働くのか?」「野村で何を達成したいのか?」、そのことについて改めて考える機会にしたいと考えました。
そこで、100周年に向けた取り組みの一つとして、2021年に「Nomuraパーパス・ジャーニー」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトで重視したことは、パーパスを言語化することではなく、社員一人ひとりが自身のパーパスについて考え、部下や上司、仲間と議論することでした。グローバルでグループの役員・社員1万人以上が様々なプログラムに参加し、それぞれが新たな気づきを得る機会となりました。
パーパスの内容について教えてください。
冒頭の問いに答えるために、パーパスには3つの要素が必要です。具体的には、「どのような世界に価値があると信じているのか?」「どの領域で私たちは活動・貢献するのか?」、そこで私たちは「どのような役割を果たしていくのか?」ということです。
―どのような世界に価値があると信じているのかー
野村グループでは、2017年から「金融資本市場を通じて、真に豊かな社会の創造に貢献する」という社会的使命(ミッション)を掲げていました。
この「豊かな社会」が、「価値がある」と信じるもの、目指すべきものです。それは、経済的な豊かさだけではなく、精神的な豊かさや自然を含む環境の豊かさも含まれます。一人ひとりが幸福、幸せと感じる状態ということもできます。もちろん、一人ひとりが望む「幸せ」は同じものではありません。したがって、個々のニーズに適した「プライベート」な対応が必要となります。そのために、私たちは、プライベート=「あなただけのための」商品・サービスの提供を目指しています。
―どの領域で活動・貢献するのか―
また、私たちがプレーするフィールドは証券、直接金融だけではなく、広く「金融資本市場」です。
金融機関が果たすべき役割は、金融資本市場を通じて、資金の供給者である投資家と資金を必要とする企業等の資金の需要者をつなぎ、流動性を供給し、健全性を担保しながら、経済の血液である「リスクマネー」の循環を後押しすることで、人々の暮らしや社会・経済の発展に貢献することに他なりません。リスクマネーを循環させることで、企業は新たな成長機会に投資し、成功の果実は、投資家へと還元され、資産形成、そして豊かな生活の実現へとつながっていきます。その結果、経済全体が成長し、国全体が発展することになります。
―どのような役割を果たしていくのかー
パーパスの3つの要素のうち2つは、すでに従来の「ミッション」のなかにありました。残りの一つ「どんな役割を果たすのか?」「豊かな社会」のために「何をするのか?」。
それは、お客様をはじめとするすべてのステークホルダーの「挑戦」、つまり何かを良くしたい、いい方向に変えたい、という思いを実現するために、ともに進んでいくことです。
グループ内も同様です。一人ひとりの社員が「挑戦」できる環境を整え、背中を押し、その実現をサポートする。常にグループ全体が挑戦を続ける。その結果として、目指す理想の姿に近づくことが出来るはずです。

パーパスがもたらす意義を教えてください。
パーパスを決めたからといって、それで終わりというわけではありません。むしろ、ここからパーパスをいかに浸透させ、成果に繋げていくか、これまで以上に努力が必要な段階に入ります。私たちのパーパスに共感してくださる方々と協力し、目標の達成に向けて進んでいきたいと考えています。
さらに、グループのパーパスとともに、社員一人ひとりが自らのパーパスを明確にすることで、「今、自分が取り組んでいる仕事は、なぜ重要なのか?」という問いに答えを見つけることができます。これにより、モチベーションが高まり、個人の成長につながり、仕事で自分らしさを実現できるようになるでしょう。そして、その結果として、お客様に対してより高い付加価値を提供できるようになると考えています。
未来に向けた経営ビジョンはありますか。
2030年に向けたビジョンは「Reaching for Sustainable Growth」です。
新たに作成したパーパスを踏まえ、2030年に向けた経営ビジョンとして、「Reaching for Sustainable Growth」を設定しました。具体的な数値目標としては、2030年に向けて、「ROE 8~10%以上の安定的な達成」及び「5,000億円超の税前利益(PTI)の達成」を掲げました。これは、2024年3月期の税前利益(2,739億円)のほぼ2倍に相当する目標です。
目標達成に向け、私がグループCEO就任以来の戦略である「パブリックに加え、プライベート領域の拡大・強化」は、もちろん変えることはありません。
これに加えて、日本のフランチャイズを活かしたグローバル戦略の深化と安定収益の拡大に注力していきます。各ビジネス部門の成長戦略に加え、部門間の緊密な連携、新たな成長分野への投資、社会課題を踏まえた価値提供、これらを通じたトップラインの成長、さらに、持続的なコスト・コントロール、効果的な資本配分を通じた収支構造の改善により、掲げた目標の達成を目指します。
安定的に収益を生むビジネスおよび資本負荷の低いビジネスについては着実な拡大をはかる一方、資本の最大の使用主体であるホールセール(WS)部門は、必要な資本を部門内で融通することを基本とした自律的成長を目指します。こうした取り組みから生み出された資本を、インベストメント・マネジメント(IM)部門やバンキング・ビジネスなどの新たな成長分野への投資に活用し、グループ全体の収益の拡大をはかっていきます。
資本負荷の低いビジネス、および資本負荷の高いビジネス、双方からの収益を持続的に拡大することで、ROE及び税前利益の飛躍的な成長を目指します。

創業以来、変わらず大切にしてきたものは?
“新しいことに挑戦し、変化を続ける” ずっと大切にしてきた野村のDNAです。
1925年、野村證券はわずか84人でスタートしました。現在では世界約30の国や地域に拠点をもち、90に及ぶ国籍をもつ約27,000人が集まるグローバルなチームへと発展してきました。これは、野村グループがお客様からの信頼にお応えし、社会から求められる存在であり続けた結果だと思っています。
加えて、常に新しいことに挑戦し、変化を続けてきたからこそ、今の野村があると言えるでしょう。「常に一歩前進することを心がけよ。停止は退歩を意味する」は、創業者の言葉です。
これから世界がどう変わっていくのか、誰も正確には予測できません。そこで不安になるのは、変わらないことを前提として考えるからです。だからこそ、変化を受け入れる、自分から進んで変わっていくことが重要です。今までの常識だけでやっていると、せっかくのチャンスを逃してしまいます。

もちろん、だれでも変化することには不安が伴います。そこで、不安に立ち向かう勇気が意味をもってくるのです。今まで誰もやっていなかったことに勇気をもって「挑戦」することは、野村の創業以来続くDNAです。
2020年4月にグループCEOに就任して以来、ビジネスのやり方や人事等の各種制度を変革してきました。グループ内でも、変化を作り出す、挑戦するカルチャーがさらに深化してきたように思います。
世界中から日本が注目されている今、野村にとって大きなチャンスだと考えています。グローバルなフランチャイズをフルに活用し、さらに一段ギアを上げ、着実に成果をあげることで、持続的な成長を実現したいと考えています。
また、今回策定したパーパスに基づいた経営を実践し、目標達成に向けて努力を続けていきます。
株主、お客様をはじめすべてのステークホルダーの皆様のご期待にお応えできるよう、全社員一同、一層の努力を続けてまいります。