チームリーダーに聞く
強くて良いチームの作り方 Case 6
野村ホールディングス データ統括部長 共同チーフ・データ・オフィサー

シリーズ「チームリーダーに聞く、強くて良いチームの作り方」。第6回は、野村ホールディングスのデータ統括部長を務める加藤あゆみへのインタビューです。グループ内でも急速に進化するAIを積極的に、かつ安全に活用するための環境整備を担うデータ統括部では、新領域に挑むメンバーからどのように新しい発想を引き出し、目標達成につなげているのか。そこには「誰一人として異質を感じさせない」という、加藤が考える強くて良いチームの素地がありました。

急速に進化するAIを安全に使うための環境作りとデータ整備

Q. データ統括部のお仕事を簡単に教えてください。

 

データ統括部では、野村グループでのデータとAIの活用を安全に進めるための環境整備を行っています。お客様や社員に提供するサービスの安全性を保ちながら、どうAIを活用して他にはない良質なサービスを生み出すか。野村に存在する、ノウハウが詰まった膨大なデータをどのように生かすのか。AIを適切に使える環境作りと、材料となるデータの整備・担保が活動の主眼です。

Q. 野村ではいつ頃からそうしたことを始めたのですか?

 

組織としてデータを管理し始めたのは10年ほど前です。日本の金融機関としてはかなり早かったと思います。当部の前身となるデータ企画管理室がデータを扱う部署として設置され、私はその初期メンバーとして参画しました。最初のデータ管理は規制対応が中心でしたが、現在はAIにもデータが使われるので、データそのものの整備や品質管理が、様々な側面で重要になっています。室を立ち上げた当初は10名程度だったチームも、現在はグローバルに業務を行う100名弱の組織へと成長し、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、インドなどに拠点を置いています。この10年で担う役割も大きく変化しています。

野村ホールディングス データ統括部長 共同チーフ・データ・オフィサー 加藤あゆみ
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野村ホールディングス データ統括部長 共同チーフ・データ・オフィサー 加藤あゆみ

理想の形を提案して、その機能の作り込みをする日々だった

Q. 加藤さんにはそうした領域の知見があったのでしょうか?

 

全くです。私は前職ではリーマン・ブラザーズのオペレーションに所属していました。オペレーションとは簡単に言うと、お客様との間で成立した売買取引を決済まで完了させるポストトレード処理全般を行う業務です。野村に入社後は、前職で培った経験や知識を活かし、野村のオペレーション改善に向けた仕組み作りとその立ち上げを行いました。その後も「こうした方がいいのでは?」と思ったことを提案しては、新しい機能の作り込みをしてきました。私はあるべき姿をゼロから描き、それにはどういう人や組織が必要かを考え、形にしていくことが好きなのかもしれません。


2011年に結婚し、産休に入る直前に携わっていたのが参照データの管理だったからか、復職時に新しい室の立ち上げに声をかけてもらいました。野村の新しい時代を切り開く礎となる取り組みだと感じましたし今もまだ道半ばではありますが、データとAIに関わる仕事と、社内での仕組みづくりの両面にとても大きな魅力を感じています。

Q. ゼロからの立ち上げ、大変でしたね

 

そうですね。私がやってきたのは、「本来こういう形が理想なのでは」という構想を描くことです。目指す姿と現状のギャップを見極め、実現するにはどんな人が必要か、誰の賛同が必要かを一つひとつ整理していく。取り組む内容によって必要なスキルセットも変わるので、それに合わせて人員配置も行ってきました。今もAIの進化に合わせて安全管理も進化させていかなければならないので、やることはどんどん変わっています。


世界中の野村グループからあがってくる、「AIをこんな風に使いたい」という要望を受け、その使い方が倫理的・法的に問題ないか、サイバー対策が十分かなど、様々な観点でのチェックを当部が統括し、確認した上で公開しています。今まで社内で展開したAIソリューションは、国内で80以上、世界では200以上になります。

AI活用を成功させるには、データ整備の迅速化が重要

Q. AIとデータの整備、聞くだけで大変そうですね?

 

AIは昨今一番変わりゆく分野で、やるべきことは多いですね。AIを使おうとすればするほど、「このデータは大丈夫なのか」という声も多くいただくようになってきました。生成AIの登場によって、テキストの文脈を理解したり要約したりができるようになり、文章をより柔軟に扱えるようになりましたので、当社が持っている膨大な独自データをより有効に活用できるチャンスが来ています。

 

一方で、当社ではこれまで各部門の業務に合わせてデータを蓄積・整理してきたため、部門をまたいで活用するとなると、今までのデータ管理のやり方を変えて、ここからさらに先進的かつ戦略的に整備を進める必要があります。データ整備は非常に地道な作業の連続なのですが、AIの進化スピードを考えると、ここをいかに迅速に進められるかが成功の鍵だと思っています。
 

自由な発想が解き放たれるために、誰も異質と感じないチームを目指す

Q. データ統括部のメンバーはどう構成されているんですか?

 

多様性の確保については、必要不可欠なものと捉えていて、意識的にチームを作ってきました。国籍やバックグラウンド、ジェンダーなども非常に多様で、東京にいる約20人のうち半分以上が外国籍です。データサイエンス専門の人もいれば、ガバナンス寄りの人もいるし、もちろんITバックグラウンドの人もいます。

 

AIは比較的新しい領域なので、様々な課題を解決するにはこれまでにない考え方が必要です。皆がそれぞれの専門性を持ち寄り、頭を柔らかくして、どうあるべきかを考えることが大事ですし、自由で枠に捉われない発想が求められます。多様な視点が新しい発想を生むと考えているのもそうですが、メンバーが誰一人として「自分が異質だ」と感じずに過ごせる環境が確保されていることがイノベーションの素地として欠かせないと思っています。「皆がそれぞれ違って、違っていて良いんだ」という、絶対的な心理的安全性をとても大切にしています。
 

Q. 前提として、お互いを否定しない組織ということですか?

 

そうです。画一的な組織では新しい意見が出にくい。組織の中で、もし自分だけ異質だと感じると、どうしても波風立てず、同調しておこうという気持ちになりやすい。これでは自由な発想は生まれませんからね。
 

マジョリティのないチームが理想

Q. そのあたりはご自身の経験も踏まえてなのでしょうか?

 

あると思います。私は生まれも育ちも日本ですが、リーマン・ブラザーズにいた20代のころ、1年間ニューヨークで仕事をしたことがあります。でも、そこには壁があってなかなか周囲に入り込めませんでした。経験の浅い新人と見られたのか意見を言ってもあまり反応してもらえず、日に日に躊躇するというか、意見を発するのが難しくなっていきました。でも、新しいことを生み出すときは、最初は小さな気づきから始まることも多いのです。「間違いかも」と思ってもどんどん発言してほしい。だから、誰一人として異質にならない、マジョリティがないチームにしたいのです。

Q. 実際、それを実現するために、日々のコミュニケーションなどはどうしていますか?

 

例えば、週に1回は皆で集まるようにしています。私の考えを話し、メンバーにも思っていることを話してもらうことで、自分を知り、お互いをより深く知るきっかけにしています。あわせて、自分を発信するためのハードルを下げる機会を作る目的もあります。また、以前はチームビルディングの一環で、メンバーに質問に答えてもらいタイプ分けをしてみたこともあります。結果を見ると、自分や仲間をより良く知るヒントになっていて皆楽しそうでした。私は、メンバー一人ひとりが自分の良さを知り、こうありたいと願う姿に近づいていくことで、チーム力は強くなると考えています。仕事上の目標だけでなく、人としてのありたい姿まで、100人全員が明確になっている。そんなチームが理想ですね。

発想はとことん自由でいい。でも、結果にはコミットしてもらう

Q. ただ、統括する立場として厳しくしなければならないこともありますよね。

 

働き方については自由にしてよいとしています。ただ、成果にはしっかりコミットしてもらいます。働き方の細かな部分には口を出しませんが、結果は見ています。ですから、例えば、物事の立ち上げ時、ブレスト段階では自由に発想してもらいますが、一度全員で方針を決めたら、その後はあれこれ言いません。「やっぱり反対だった」というのも基本的に無しです。発想や働き方は自由ですが、内部のガバナンスは厳しくしているので、決定後に違う動きをすることはできない、と伝えています。

Q. あくまでも、結果を出すための自由だと?

 

というより、自由な環境があるからこそ結果が出ると考えています。自由な発想はイノベーションの土台です。今までの常識にとらわれず、どうすればよりスピーディに進められるか。チームメンバーには自分でベストなプロセスをイチから描く勇気を持って欲しいと伝えています。そのために最初に必ずゴールを共有して、そこに到達するための道筋は自由に考えてもらう。ゴールはぶらさないですが、進め方は色々あっていいはずですよね。

強くて良いチームの実現に大切なこと
自由な発想を解き放つための
環境を整える
•	チーム一人ひとりのありたい姿が明確
•	誰一人として異質にならない環境
•	全会一致で決めたことには全員がコミット

加藤 あゆみ (かとう あゆみ)
野村ホールディングス データ統括部長 共同チーフ・データ・オフィサー

 

2008年、野村ホールディングス入社。オペレーションを経て、2014年、データ企画管理室(現:データ統括部)立ち上げに参画。当社初となるデータ・ガバナンス基盤を構築するなど業界の先駆者として野村グループのデータ戦略を牽引し、2020年に部長就任。2023年からはガバナンスに加え、データCoEのリードの一人として全社的なデータ利活用を推進。加えて2024年からはAIガバナンス体制の確立を主導している。2025年より現職。
以前はリーマン・ブラザーズにて、オペレーション部門の要職を務めた。2人の子を育てるワーキングマザーでもある。