シリーズ「チームリーダーに聞く、強くて良いチームの作り方」。第4回は、野村アセットマネジメントのリスク管理部長を務める森 徹へのインタビューです。数理や統計学に強くリスク分析に専念していたチームを、プロダクト全体のガバナンスに携わるプロ集団に変えた取り組み―業界に先駆けた「ファンド・レビュー・レポート」の公表や、フロントとの対話を通じた改善策の推進、若手が主体的に学び成長できる体制づくりについて語ります。
Q. 野村アセットマネジメントのリスク管理部とは、どんなチームですか?
リスクにはいろいろありますが、私たちが扱うのはお客様の運用資産のリスク管理や運用パフォーマンスの分析、評価が主な仕事です。部員は15人で、若手社員と経験豊富な中堅以上の社員が半々です。お客様の資産が適切に運用されているか全体に目を配る業務を中堅以上の社員が担当していて、若手は個々のプロダクトの品質管理を担っています。大量のデータを集約して、数理や統計学を駆使して分析するので、数理的素養やテクノロジーに強いメンバーがほとんどです。
2023年からは、『ファンド・レビュー・レポート』を業界に先駆けて公表しています。これは、当社が自ら運用している商品について、運用実績や商品性、情報提供など複数の観点で評価し、その結果を分かりやすく公表するレポートです。私たちの象徴的な活動で、自社のファンドに対して私たちリスク管理部が評価をつけています。
同種のファンドと比べてパフォーマンスが振るわないものなどには個別のページを割いて、その理由や課題に対する考え方も書いています。これはお客様の安定的な資産形成を実現する上で大切なことと考えていて、プロダクトガバナンス、つまりお客様に十分な付加価値をお届けするための品質管理における改善活動の一つです。
部の業務としては大きな変化であり、ETFを除く約600におよぶ公募投信をレビューしてレポートを公表することは、通常の業務に加えた新たな挑戦でした。会社としても力を入れている取り組みということもあり、この活動を通じてリスク管理部は、会社全体のプロダクトガバナンスにおいて中心的な立ち位置になってきたと感じています。

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- 野村アセットマネジメント リスク管理部長 森 徹
Q. 中心的な立ち位置になってきたとのことですが、今まではそうではなかったのですか?
以前は、極端に言えば、過去の運用実績を見てパフォーマンスが悪ければ悪いと指摘する、どちらかと言えば、運用者側からは煙たがられる存在でした。本来ならば運用部を独立した立場でけん制しつつ、より良いパフォーマンスに向けた改善を後押しする。運用現場の課題があれば経営陣に共有し、判断を仰いで解決に導く。そんな頼れる存在でありたかったのです。しかし、現実はそうではない状況があり、私はまずその風向きを変えたいと思いました。
それで、「分析報告の部署」ではなく、会社としてもっと意義のあることを提案できる部にしよう。単に運用の善し悪しを分析して、ここがダメと言うだけでなく、なぜダメなのか、どうしたらよいのか、という対応策を共に考えて提案できる自分たちになろう。データをもっと深く分析して、誰もが納得のいくものにしよう。そうした運用の本質に関われるチームを目指しました。
簡単ではありませんが、せっかく分析のプロが集まっているのだから、フロントに対して「これはなぜですか?」と聞いて、課題を出してもらって、対話しながら解決していける自分たちになれるはずだ、と思ったんです。
2023年の『ファンド・レビュー・レポート』が追い風になり、実際に一歩踏み込んで、フロントの部署と対話をしながら改善を促す役割を果たせるようになってきました。今は、運用がベストを尽くせているかどうか、業界のベストプラクティスを意識して、測定して、課題があれば改善すべきと伝えています。もちろん、フロントの運用側でも品質管理はやっていますが、私たちはそれがちゃんと機能しているかをさらにチェックし、外向けのレポートでも示すことで、より実効性を高める役割を担うようになっています。
Q. チームのメンバーに伝え続けていることは?
着任して最初の2年は、部の中心メンバーとだけ先ほどお話したような問題意識を共有していましたが、その後は全メンバーに対して「お客様のために、提供しているサービスをいかに良くするかを考えて、フロント側の部署と、馴れ合いでなく緊張感ある協力関係を維持しながら、助け、頼られる存在になりましょう。そうすることで部の存在感を高めて、いつか自分がこの部を離れるときには、この部署にいたことを誇れる組織にしましょう」と、言い続けています。
もちろん、何のためにこの仕事をしているかを理解してもらうことは大切なので、誰もが疑わない普遍的な目標、部のパーパスも示しています。それに整合したことをやっていけば、みんなが納得感を持って動けるはずです。実際、チームの意識も変わってきて、今は私の考え方を踏まえつつ、みんな高い志を持って工夫しながらやってくれています。
Q. 部の編成は若手と中堅以上の社員が半々ということですが、チームとしてうまくやれる秘訣はありますか?
上位者が押し付けがましく言わないよう、指示系統は一部に限定しています。これは非常に大事だと思っています。これで若手が主体的に動けるチームになる。あと、データ取得のような淡々とした作業も若手だけでなく皆で関わるようなフラットな組織にしています。そうすることで、逆に上の人へのリスペクトも生まれて「教えてください」となるし、上の人も若手に対して「協力してください」という形でお願いするようになるのです。
Q. 部員とのコミュニケーションで気をつけていることは?
その人にあった距離感を保つ。これは私だけでは無理なので、組織検討会のようなものを一部の中心メンバーと毎週欠かさずやっています。チームの状況や何か変わったことはないかを共有する場です。あとは部の中心メンバーをリスペクトしつつ、私の役目は横展開。チームの業務がより会社に活かせるように、必要とあらば、いろいろな部署の人と話をしたり、失敗を恐れず時にぶつかり合ったりしながらも、お互いの合意点を探りに行くことで、信頼関係を作っています。
私は野球部で言えば、監督ではなくマネージャー。チームの進むべき方向(目標やパーパス)を示しつつ、部員一人ひとりが力を発揮してイキイキと活躍できる環境を整えることで、組織全体のパフォーマンスを高めたいと考えています。そして、触媒となってチームに変化を促したり、変化を引き起したりする働きができるよう意識しています。
Q. 最後に、森さんが目指すチームを教えてください。
もっともっと幅広いチャレンジ、成長の機会を与えられるチームにしたい。あり得ないことですが、入社から定年まで、この部署にいれば「全てやり尽くした!」って思えるチーム(笑)。それぐらいフィールドが広く、いろんな経験とチャレンジができるチームにしたいです。防衛を担う部署なので限界はありますが、どうしたらそれが実現できるのかと考えながら取り組んでいます。
森 徹 (もり とおる)
野村アセットマネジメント リスク管理部長
1996年、野村証券投資信託委託(現:野村アセットマネジメント)入社。商品開発部を経て、1997年より投資技術開発室で従事。在籍中に米国大手運用会社(ニューヨーク)のRisk Management Groupへ研修派遣される。2000年以降はシステム開発部(現:IT戦略部)、運用企画部、投資開発部といったクォンツ・IT系の部署を歴任。2020年4月より現職。
東京工業大学大学院総合理工学研究科修了