
3回のシリーズでお届けする「チームリーダーに聞く、強くて良いチームの作り方」。最終回は、野村ホールディングスのグループ法務部長を務める宮内佐和子です。法のプロと金融現場のプロが混在するチームで、個々の能力をどう融合させているのかを紹介します。
Q. グループ法務部のお仕事を簡単にご紹介ください。
私たちは、株主総会や取締役会といったガバナンス、法定開示に関連する検討といった上場持株会社として必要な法務業務や、野村グループとしての出資案件、社債の発行、知財管理などをしています。金融機関の場合は規制業種なので、事業会社全体に適用される一般の法律に加えて、業規制上の検討も必要な点が他業種の法務と大きく違うところだと思います。ただ、高い法律知識を最初から持っている必要はなく、落としどころを見極めるバランス感覚や公平感の物差しが大切な仕事です。
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- 野村ホールディングス グループ法務部長 宮内 佐和子
Q. グループ法務部のメンバー構成を教えてください。
グループ法務部は50人ほどで、全員が野村證券の法務部か、取引法務部との兼務です。グループ法務部が主務の社員は26人です。チームには新卒採用者(以下、プロパー)も中途採用者も、別の部門から来た人もいます。日米の弁護士資格を持つ有資格者は20人弱で、彼らも法律事務所出身者から、司法修習を終えてそのまま入社した者までいろいろです。同じような経歴の人だけでは判断や思考が偏る可能性があるため、メンバーの多様性はチームの強みに直結すると考えています。有資格者だけしか採用しない会社もありますが、私はそういう方向では考えていません。
Q. メンバーの適材適所はどう判断していますか
メンバーの強みは、緻密な論理的思考だったり、プレゼンや説明の上手さだったり、精緻な文章力だったり、それぞれ異なるので、日々の業務や言動を通じて適性を見ています。ただ、人によって見え方も異なるので、他のマネージャーにも意見を聞いています。キャリアの話をする中で個々の志向もヒアリングしますが、興味や志向は少しずつ変わるので、変化していくものだという認識のもとで情報をアップデートしています。

Q. 有資格者のような専門家とプロパーの皆さんとは、うまくやれるものなのでしょうか?
相乗効果や補完し合えるメリットのほうが大きいですよ。日々の業務で直面するような細かい金融規制の領域は、弁護士でもすぐ分からない部分が多いんです。金融商品取引法の業規制を専門とする弁護士はもともと多くないし、一般的な企業法務をやってきた弁護士は業界特有の実務感覚が必ずしも最初からあるわけではない。ですから、野村證券の支店など、現場の経験者がいる相乗効果は大きいと思っています。支店経験者の現場感覚は中途採用者には本当に新鮮なんです。一方で、有資格者たちがドキュメントをレビューするときの、細部にわたる向き合い方などはプロパー社員の学びにもなっていると思います。

Q. 良いチームのために気をつけていることは?
いろんな人がいてもいろんな意見が出ないと意味がないので、組織として話しやすい環境を作るのは私の責任です。「この人に話しても無駄だな」と諦められないよう、話を聴く姿勢はもちろん、話の意図を理解して消化できるだけの自分の力も大切だと思っています。
また、自分の意見を伝えたり、議論したりする時のストレートさや主張の強度については、性格やバックグラウンドによって、快適だと思える状況はいろいろです。ですから、状況に応じて柔らかいコミュニケーションを心がけたり、様々な意見の呼び水となるよう敢えて異なる視点の考え方を示したりするなど、意見を出しやすい環境をつくることを意識しています。
野村の法務にはいろんな人が必要ですから、多様なメンバーが柔らかに刺激し合うチームがいいなと考えています。

宮内 佐和子(みやうち さわこ)
野村ホールディングス グループ法務部長
弁護士・ニューヨーク州弁護士
2003年弁護士登録。2003年から2012年まで森・濱田松本法律事務所。2012年から2015年まで日産自動車株式会社。2015年野村證券入社。法務部および野村ホールディングス株式会社グループ法務部に配属後、2016年に法務部法務二課長。2022年より現職。