インデックスとは、株式市場や債券市場の動きを表す「指数」のことです。前編では、「市場の温度計」といった役割もあるというご紹介をしました。ニュースで目にする日経平均やTOPIXだけでなく、実際には様々なインデックスが運営され、投資や運用の現場で活用されています。


今回は、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング(NFRC)が手がける2つの指数を紹介します。読売新聞グループ本社が2025年3月24日より算出・公表を開始した国内株式の新しい指数「読売株価指数(読売333)」と、2026年5月に40周年を迎えた日本を代表する国内債券インデックス「NOMURA-BPI」。それぞれの担当者に、インデックスがどのように作られ、どのように活用されているのかを聞きました。

日経平均やTOPIXに続く、新しい指数「読売333」

日経平均やTOPIXだけでは見えにくい、日本株の動きを別の角度から見られるようにした「読売333」。代表的な株価指数に続く「第3の視点」として、どのような考え方で設計され作られたのかを聞きました。

解説してくれたのは...

野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング
インデックス事業部 インデックス開発グループリーダー
清水康弘 エグゼクティブ・クオンツアナリスト

 

Q. どうして「読売333」を作ることになったのですか?

 

これまで、日本で株価指数といえば、日経平均とTOPIXの2つがメインでした。ただ、ニュースで流れる日経平均だけ見れば日本株の動きがわかるのか、別の切り口もあった方がいいのではないかと、以前から考えていました。そうした中で、読売新聞社から新しい指数を作りたいという話をいただいたことがきっかけになりました。
 

日本で上場している銘柄は約4,000あり、全ての株価の動きを1つの数字で表そうとしても、現実はなかなか難しい。そこで、日経平均とは異なる視点、TOPIXとはまた異なる視点が入れば、日本のマーケットがより詳しく、分かりやすく見られるようになると考えました。
 

Q. 「読売333」の仕組みや特徴を教えてください。

読売333は「等ウエイト」という考え方で、組み入れる全ての銘柄に同じ金額を均等に投資した場合の状態を見ます。例えば、1億円を100銘柄に投資するとしたら、100万円ずつ均等に投資をした場合のパフォーマンスを見る指数です。株価が1万円の株も1000円の株も同じ金額分を組み入れるので、片方がプラス5%、もう一方がマイナス5%であれば変動はゼロになるわけです。ただ、大きな企業と小さな企業を同じウエイトで扱うので、日本の経済全体を測る指標にはなりにくい。とはいえ、この指数は、投資家が思うマーケットの動きにより近いと期待しています。つまり、例えば10銘柄あるとして、皆さんがその全体の株価の動きを考えるとき、その10銘柄の動きの平均をイメージしたとすれば、恐らくそれに一番近いものになっているのではないかと思います。
 

TOPIXや日経平均を見ているだけだとちょっと気づきにくいマーケットの動きが、これを使うことによって見えてくるような、第3の視点の提供を目的として作った指数になります。
 

Q. そもそも、指数はどうやって作るのですか?

 

指数を作る手順は、まず、その指数の目的、つまりどういう指数を作りたいかを決めることから始まります。次に、それを実現するための銘柄選びや組み入れのルールを決めます。そこからは、臨床実験というか、過去のデータを使って、実際にそのルールでやってみたらどんな数値になるのかをテストします。重要なのは、指数が目指すべき特性を示しながら、かつ指数が意図していない偏りが起こらないようにすることです。そのようにルールなどを調整して、バランスを取ることを繰り返して完成させます。

 

333銘柄にしたのはマーケット全体をある程度カバーできること。そして、株式の流動性の面でも、それに連動したファンドを作った場合に取引が可能であること。そしてもう一つは、語呂の良さで決めました。指数は中身のロジックに加えて「覚えてもらいやすいこと」も重要な要素と考えています。

Q. 「読売333」の今後の展望を教えてください。

 

今後は、日経平均やTOPIXだけでは見えにくい、相場の実態を補う指標として活用されれば、市場の動きをより正確に伝えられるようになると思います。そういった目的で、ニュースや投資家の間でも使ってもらえたらと。また、実は「等ウエイト指数」はパフォーマンスもいいので、指数に紐づいたファンドの運用においても投資ツールとして活用されることを期待しています。

国内債券市場を支えるインデックス「NOMURA-BPI」

NOMURA-BPIは、日本の債券市場で長く使われてきた日本初の国内債券インデックスです。機関投資家の運用や分析の現場で、どのように活用され、どんな役割を果たしているのかを聞きました。

解説してくれたのは...

野村デューシャリー・リサーチ&コンサルティング
インデックス事業部 監理グループリーダー
深澤弘恵 シニア・クオンツアナリスト

 

Q. NOMURA-BPIとは、どんな指数ですか?
 

今からちょうど40年前の1986年にできた日本初の国内債券インデックスがNOMURA-BPI(Nomura Bond Performance Index)です。日本の債券市場は、流通ベースで600~700兆円と推計される株式市場よりもさらに大きい、1,000兆円規模のマーケットで、年金基金や保険会社など低リスク志向の機関投資家が主たる運用者です。
 

なかでも約300兆円の資産残高を抱えるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、国内債券約75兆円を運用するためのベンチマークとしてNOMURA-BPIを採用しています。運用を任されているファンドマネージャーは、例えば、NOMURA-BPIの指数値と比べて「0.01%プラスでした」「0.01%マイナスでした」といった形で投資家に報告するわけです。
 

算出ルールはTOPIXと同じ「時価総額加重型」で、日本の1,000兆円規模の国債や70兆円規模の社債などを幅広く組み入れています。

Q. NOMURA-BPIは、運用や分析の現場でどのように使われているのですか?

 

NOMURA-BPIでは、値動きだけでなく、個別銘柄レベルで国債や社債の残高や利回り、リスク等の投資判断に役立つデータもあわせて提供しています。そうしたデータを使うことで、国債以外の地方債や社債の投資妙味や、残高変化から垣間見る市場構成変化など、色々な分析ができます。また、運用者に加え、リサーチャーやシンクタンクの方々が蓄積して分析に使える、データインフラとしての役割も担っています。
 

国内債券は低リスクとはいえ、運用規模が75兆円となると、パフォーマンスが0.01%ずれただけでも75億円になるので大騒ぎです。ですから、細かいデータを毎日出して、インデックスに沿った運用の参考にしていただいています。

Q. NOMURA-BPIの今後の展望を教えてください。

 

インデックスの算出には、それぞれの銘柄の時価を収集することが不可欠です。しかし、日本の債券市場では、株のように取引所で価格が公開されているわけではなく、主に売り手と買い手が当事者同士で価格や売買数量等を決めて行う「相対取引」で売買されています。そのため、1つ1つの銘柄の価格をすべて把握することは容易ではありません。そのような中で、1万を超える銘柄に対して日々、その時点の評価時価を提供できる――これは、野村グループならではの強みです。野村證券は、創業当初から公社債を扱う専門業者(ボンド・ハウス)としてスタートしました。NOMURA-BPIは、長年にわたって国内債券市場に深く関わってきた野村グループだからこそ実現できるサービスだと考えています。
 

そうした原点を大切にして、私たちは、市場環境の変化に合わせたルールの見直しや指数ラインナップの拡充なども重ねています。これからも使い勝手がよく、信頼される指数であり続けるために、品質の維持・向上に取り組んでいきます。
 

国内債券インデックスとして圧倒的なシェアを持つNOMURA-BPIが今後も選ばれ続けるためには、国内債券そのものの魅力や特性を、しっかり伝えていくことが欠かせません。「インデックス」の先にある国内債券投資の意義を、これからも発信していきたいと考えています。