野村證券,野村グループ,創立100周年,リサーチ,調査の野村,リサーチャー,総合力,野村,トップリサーチャー対談,創業者が目指した”調査の野村”の今

今年で創立100周年を迎える野村グループが擁するリサーチャーおよびコンサルタントの数は約400名。その源流は、1906年、野村證券の前身である野村徳七商店に設立された調査部にまで遡ります。
 

創業者・野村徳七の「我々には凡て(すべて)の証券に就いて、その本質に就いての研究を、科学的になすべき責任がある」の信念は、「調査の野村」の礎となりました。その志を受け継ぐ「リサーチ」に携わる経済調査部長 兼 市場戦略リサーチ部長の池田 雄之輔と、エクイティ・リサーチ部長の松本 裕司に、野村のリサーチの今と、リサーチャーたちの想いを聞きました。

リサーチャーと呼ばれる人たち

文系理系、専門も幅広く、バックグラウンドも多様化

Q. リサーチャーはざっくりいうとどんな人たちなんでしょうか?

野村證券 経済調査部長 兼 市場戦略リサーチ部長 池田 雄之輔
拡大
野村證券 経済調査部長 兼 市場戦略リサーチ部長 池田 雄之輔

池田:役割はエコノミストとストラテジストとで大きく違います。経済指標やGDP、インフレ、失業率、あるいは日銀の動きなどを分析して、経済の見通しを立てるのがエコノミスト。一方で、為替や債券、株式といった市場を分析して、投資戦略を立てるのがストラテジストです。

リサーチャーのバックグラウンドもどんどん多様化しています。もちろんリサーチをやりたくて入ってきた人も多いですが、もとは金融機関で運用をしていたりとか、官公庁で市場部門の仕事をしていた方が、中途で入社してストラテジストとして活躍していたりもします。大学時代の専門も、経済だけでなく、法学や政治、国際関係、最近ではデータ分析に慣れているということで理系の方もすごく増えてきました。
 

野村證券 エクイティ・リサーチ部長、鉄鋼・非鉄・電線アナリスト 松本 裕司
拡大
野村證券 エクイティ・リサーチ部長、鉄鋼・非鉄・電線アナリスト 松本 裕司

松本:うちの部は、エクイティリサーチ・アナリストと言って、個別の上場企業の財務分析や業界分析、経営者へのインタビューなどをもとに、企業株式の投資価値の分析や評価をしているんですけど、文系の学部の出身者の人が多いです。ただ、理系学部の出身者もいますし、医薬の業界は専門性が求められるので、医薬のバックグラウンドを持っている人が多いです。博士号を持っている人もいます。

創業者の想いに通じるベテランリサーチャーの信念

誠実なリサーチを意識し、バイアスをかけず、視野を広く持つ

Q. 多様な人が働いている中で、お二人はリサーチャーとして30年ほど活躍してこられました。仕事に対してどんな信念をお持ちですか?また、経験を重ねることで変化したことはありますか?

池田:
レポートを書くときや、お客様に話をするときは、思っていることを隠さずに、あるいは余計なことを足さずに、「誠実に伝える」ということをずっと信念として守ってきました。大学時代にゼミの先生から「通説を疑え」と叩き込まれたんです。「世の中で言われていることは正しいとは限らない、何事も疑ってかかるべき」と教わりました。私自身、疑い深い性格なので(笑)とにかくごまかさず誠実なリサーチをすることを意識してきました。

変わってきたことでいうと、昔は自分が本当に正しいと思ったことは、たとえ読みが外れたとしても、市場の方が間違っていると考えていた時期がありました。でも結局のところ、市場というのは理屈上の正しさではなく、みんながそうだと信じたほうが正解なんです。投資家心理をつかむことの大切さは、ストラテジストを長くやってきた中で身に染みて覚えたことの一つです。

野村のリサーチャーとコンサルタントは総勢約400人。各分野のスペシャリストが毎年数千に及ぶレポートを投資家に向けて発行している。
拡大
野村のリサーチャーとコンサルタントは総勢約400人。各分野のスペシャリストが毎年数千に及ぶレポートを投資家に向けて発行している。

松本:私もそれに近いのですが、余計なバイアスをかけずフェアに意見を言うようにしています。それは決して中庸という意味ではなく、さまざまなデータから導き出した見解を、まわりの状況やこちらの都合に関係なく正直に伝えるということです。どうすればフェアな見方ができるか。一つには過去がどうだったかを調べることです。時間をかければ誰でもできると思われがちですが、ここを疎かにする人が結構多いんです。

あとは視野を広く持つこと。経済は連動しているので、特定の企業だけではなく周辺の企業や海外企業なども一緒に見ることが大切です。業界を長く見ていると、経験者の強みで、「この会社はこういうときにこうなる」という見通しが割と当たることが多いんです。ただ、本当にその会社が変わるときに見落としてしまわないよう注意しています。

野村のリサーチに期待されていること

Q. お二人がそういったこだわりを持って情報発信をすることで目指すところはどこでしょうか?

池田:
やっぱり、「野村はさすがだね」ってお客様から言われることがすごく大事だなと思っています。正しいことをやって、かつ、お客様からも評価されるのが一番嬉しいんです。

正しいことを正直に言う。そして何より、野村の総合力に期待

Q. お客様が野村のリサーチに期待していることは何だと思いますか?
 

池田:「野村には横綱相撲をしてほしい」とよく言われます。小細工をせず堂々と勝負してほしいと。誤解を恐れず言うと、野村はもともと知名度があるので、今さら注目を集める必要はありません。だからこそ「正しいことを正直に言ってほしい」という期待が高いのだと思います。その上でしっかり他社と差別化できるのが理想で、正しいことを言ってお客様に喜んでもらえたときが一番嬉しいですね。
 

松本:企業の四半期決算に合わせて業績の予測をするのも大事な仕事ですが、お客様はもっと長期にわたる業界や技術、企業の変化を深く分析することを求めていると思います。特に最近は、エコノミストとストラテジスト、あるいは海外のリサーチャーとの協業といった野村の総合力が期待されているのを感じます。

野村の総合力を発揮するキャラバン

世界を巡り、日本市場の魅力を伝えたキャラバン「Japan's Transformation」は、世界の投資家の注目を集めた。
拡大
世界を巡り、日本市場の魅力を伝えたキャラバン「Japan's Transformation」は、世界の投資家の注目を集めた。

日本市場のダイナミックさや中長期のポテンシャルをアピール

Q. マクロ経済とミクロ経済をカバーしているリサーチチームが連携してリサーチ情報を発信する「キャラバン」と呼ぶ活動をしているんですよね?
 

池田:はい。エコノミスト、ストラテジスト数名とアナリスト数名がチームを組み、海外の各都市を訪問して、日本の経済市場のダイナミックな動きや中長期のポテンシャルを投資家に知ってもらうのがキャラバンのコンセプトです。野村のリサーチの総合力をアピールする絶好の機会でもあります。マクロとミクロのチームは、もちろん日々いろいろな形で情報交換をしていますが、節目節目で両方の視点を合わせた大きなテーマでリサーチすることもやっていて、キャラバンもその一つです。

2023年8月には『Revisit Japan』というキャラバンで、「値上げ・価格戦略の潮流を探る」というレポートをつくりました。マクロのエコノミストや私のようなストラテジストが物価指標や人手不足の動向を伝えつつ、実際に各業界ではどういった価格戦略が展開されているかをそれぞれのアナリストに解説してもらいました。松本さんにも鉄鋼メーカーが積極的に値上げ交渉をしているというレポートを出してもらいましたし、他のセクターからも実際に起きている事例がいくつも出てきたんです。海外投資家が注目していたテーマだったこともあり、あの時は「さすが野村」と評価されたのを覚えています。データだけでなく、具体的な企業の動向で裏付けを示すことで、説得力が増すということを、私自身も改めて理解した貴重な体験でした。
 

松本:アナリストだけだと気づかないことも多いんですよ。マクロのリサーチャーが大きな視点から語ってくれることが刺激になったり、次のリサーチのアイデアにつながったりすることもあります。それまであまり交流のなかったエコノミストやストラテジストのことを知って、それがきっかけで協業が広がることもあります。キャラバンは、野村のリサーチの強みや総合力を引き出すとても良い機会だと思います。
 

グローバル・リサーチの現在

「強みは日本とアジア」だと、海外の投資家も見てくれている

Q. グローバルにおける野村のリサーチはどのような状況でしょうか?
 

池田:2008年にリーマン・ブラザーズから人員を承継したのをきっかけに、海外のリサーチャーが大勢入ってきたんです。それを機に海外のヘッジファンドなどお客様の幅も広がりました。その頃私は為替のアナリストをしていて、日本円についてのグローバルな問い合わせがかなり増えたと記憶しています。

例えば2011年頃にヨーロッパの債務危機で一気に円高が進んだときは、日本の財務省が為替介入をするタイミングや規模について聞かれたり、アベノミクスで円安になったときも、「日本のことを一番詳しいのは野村だから」と頼ってくれたりして、幅広く情報を発信できました。そこではリーマンと統合したメリットが大きかったと思います。その後、特に日本とアジアに関しては、海外の投資家も野村の強みと見てくれています。
 

松本:個別株についても現在はアジアにシフトしてきています。特にテクノロジー関連は、半導体などでアジアが結構大事なので、韓国やインドのリサーチャーと密に連携しています。

他にも個別株のトピックとしては、2020年に戦略的提携を結んだウルフ・リサーチと情報交換をすることで、米国株のリサーチの充実を図っています。
 

「調査の野村」の志を次世代に引き継ぐ

見通せない先を予測するのが我々の仕事。志を持ってチャレンジしてほしい

Q. 今後、野村のリサーチを担っていく若い人たちに求めることはなんですか?
 

池田:リサーチャーにとって負けず嫌いであることは大切です。すでに誰かがやっていることはできて当たり前。誰もやっていないことに取り組んで、それを自分の付加価値にしてほしいです。リサーチャーはこれをやればナンバーワンになれるという正解がありません。たくさんレポートを書いて評価される人もいれば、レポートはほとんど書かないのに、しゃべりが面白くて人気になる人もいる。持ち味を活かした人が勝てる世界です。ですから、ここだけは絶対に負けないという専門性を見つけてほしいと思います。
 

松本:あの人はトップアナリストだからといって、その人と同じことをやればいいわけではない。そこがまた面白いところで、自由度がありますよね。若いうちは、上司だけでなく、いろんな人のいいところを吸収していくことが大切です。その中で自分のスタイルを見つければいいと思います。

大事なのは、わからないものをわからないで済まさないこと。先行きが見通せないことこそお客様は知りたがっています。それを予測するのが我々の仕事なので、いろいろな手段を講じて、ベストな答えを出すことにチャレンジしてほしい。「自分が日本のリサーチを背負っていくんだ」という志をもってもらいたいですね。


 

Q. 最後に、野村のリサーチの強みはなんでしょう?


松本:なんといっても総合力だと思います。チーフのエコノミストやストラテジストだけでなく、マクロからミクロまで、層の厚さを感じますね。
 

池田:若い人が活躍できるのも大きいと思います。割とやんちゃが許されるというか、若手にとってはいいカルチャーですよね。

 

松本2年目のアナリストにも個別株を担当させることもありますから。昔から若い人に挑戦の機会を与えるのは野村のリサーチのいいところだと思います。

 

プロフィール

池田 雄之輔(いけだ  ゆうのすけ)
野村證券 経済調査部長 兼 市場戦略リサーチ部長
日本のマクロ調査(経済および市場戦略)を統括。野村総合研究所、ノムラインターナショナルplc(ロンドン)を経て、野村證券入社。一貫してマクロ調査を担当。シニアエコノミスト、為替、株式のチーフ・ストラテジストを歴任。ロンドン駐在時代に築いた海外投資家とのネットワークを活かし、データに現れない「次の動き」を読み取っている。
2015、17年の日経ヴェリタス人気アナリスト調査(為替部門)で1位を獲得。
現在、テレビ東京「モーニングサテライト」に定期的に出演中。
東京大学経済学部卒業、米国ロチェスター大学にてMBA取得。
◎お客様の特性に合わせて臨機応変な対応を行い、心に響く分析を提供。

 

松本 裕司(まつもと ゆうじ)
野村證券 エクイティ・リサーチ部長
鉄鋼・非鉄・電線アナリスト
野村総合研究所を経て、野村證券入社。2008年より鉄鋼、非鉄、電線セクターを担当。製造業を幅広く見てきた経験を生かし、他の産業、海外チームとの共同調査を取り入れ、多方面からの産業調査、銘柄選別に注力。以前は、ガラス、セメント、紙パルプ、化粧品、トイレタリーなどを担当。
日経ヴェリタスランキングの紙パ・その他素材部門で2006~2008年1位、鉄鋼・非鉄部門で2017~2018年1位。Institutional Investorランキング特殊材料(セラミック、ガラス、紙パルプ、繊維を含む)部門で2008年1位、メタル部門で2017年1位。

国際基督教大学大学院博士前期課程修了
◎アピールポイントは緻密さとお客様を惹きつける魅力的なトーク。