サステナビリティ

DEI推進室 室長インタビュー
野村の多様性の活かし方

2025年3月8日の国際女性デー。野村ホールディングスは、日経ウーマンエンパワーメントプロジェクトの一環として、日本経済新聞に「多様性を組織の力に」というコピーの広告を掲載しました。
世界約30の国や地域に拠点を持ち、27,000人を超える社員・役員が活躍する野村グループは、多様性をどのように考え、どう活かしきろうとしているのでしょうか。
現状も踏まえて、野村ホールディングス DEI推進室の中西康恵室長にインタビューしました。
※ DEI:ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン

サマリー

  • 「多様性を組織の力に」という広告には、「多様な社員・役員が自身らしく働ける環境を重視し、それを最大限の成果につなげていこう」という想いが凝縮されています。
  • 野村グループで働く約27,000人の社員・役員の国籍は90ヵ国を超えており、まさにグローバルなチーム。全社員が自分らしく働けるための取り組みを推進しています。
  • 社員一人ひとりが自分らしさを発揮ながら会社のパーパスの実践に寄与することが重要であり、個々人の業務や価値観がどのように組織の目的に結びつくのかが大切です。

国際女性デー: 新聞広告に込めた想い

Q. 野村は3月8日の国際女性デーに「多様性を組織の力に」という広告を出しました。この意図をお聞かせください。

野村は、2008年のリーマンブラザーズの事業承継以降、多様な文化と人材が加わったことで、大きな変化があったと聞いています。一気に多国籍となり、組織も再編され、当社にとって大きな転換点だったのでしょう。
日本では、キャリア採用もより積極的に行われるようになり、私自身2014年に他業界での人事キャリアを活かし新たな挑戦をしたいと思い、野村に入社しました。実際、入社してみると、それまで複数社経験してきた外資の日本支社よりよほど多国籍。そして、社員がみな野村のブランドを大事にしながらも自分らしく仕事しているのが印象的だった記憶があります。

「多様性を組織の力に」という言葉は、当社のコアメッセージとなっています。社員の多様性がある一方で、職場はまだそのポテンシャルをフルに活かしきれていないという現状を表しています。社内には人事にモノを言ってはいけないなどの誤解があって、自分のことは我慢しようと思いがちな場面を目にしてきました。
本メッセージには、「私たちの強みである多様性を活かすためには、誰もが自分らしくあることが第一。その結果が最大限の成果に繋がる。」 そんな思いが凝縮されています。

DEI推進室 室長 中西康恵

野村における多様性の現状

Q. 野村の多様性ですが、現在はどんな状況でしょうか。

リーマン継承前、日本国内:海外拠点の人員比率は約8:2でしたが、今は半々近くになっています。具体的には日本が約15,000人、海外が約12,000人で世界約30の国や地域にネットワークが拡がっています。社員の国籍は90ヵ国を超えており、日本国内においても多国籍で、属性も経験値も本当に多様な人が働いています。国内での野村のイメージは典型的な日本企業で、海外に少し支店がある程度の印象を持たれるかもしれませんが、本社も海外拠点もほぼ並列、同じ立ち位置で仕事をしているまさにグローバル企業です。

一人ひとりが自分らしく働くために

Q. 多様性をフルポテンシャルで活かしきるために、具体的に取り組まれていることはありますか?

今回、日経xwoman (クロスウーマン)の広告記事で、いわゆる全国転勤型から転居を伴わないエリア型の雇用形態に転換した男性社員を取り上げました。職場での評価も高く期待も大きい方ですが、社内結婚でお子さんが生まれた時に家族の在り方を考え、子育ても仕事も自分らしく頑張りたいとエリア型を選択されました。

社員一人ひとりのキャリア自律が支援されている今では、仕事もライフも大切という考えが浸透し、エリア型を希望する社員も増加しています。性別を問わず、自分らしく頑張れる働き方を選ぶ社員が多くなってきているということです。
奥田グループCEOも「一人ひとりが自分らしく」とよく話されます。「自分らしくていい」という価値観を受け入れる空気は野村の中で確実に広がっています。

令和5年度には、経済産業省とJPX(日本取引所グループ)が新たに設置した「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に選ばれました。これは当社が性差関係なく本当に自分らしく働ける制度を作り、環境整備に取り組んできたことへの称号で、設置初年度に野村を選んでいただけたことに意義を感じています。

「会社が目指すゴール」と「自分らしさ」

誰もが自分らしく成長し、ポテンシャルを最大限に発揮できる組織に

Q. 一方、「自分らしく」をどんどん推奨していくと、みんなバラバラになってしまう場合も出てきそうです。

「自分らしさ」の推進をただの自由と捉えるとそうなるかもしれません。だからこそ大切なのが、会社のゴール=パーパスです。自分らしさを存分に発揮しながらどこに向かうのか。その野村としてのゴールは明確でなければなりません。ですから、パーパスが策定されたとき、私たちは野村のDEIステートメントも更新し「誰もが自分らしく成長し、ポテンシャルを最大限に発揮されることが、会社のパーパスを実践することになる」とはっきり記しました。自分らしさや自由というのは、会社のゴールに向けて成果を上げることの大前提となります。

Q. 「自分らしさ」というのが「会社が目指すゴールにつながっていなければならない」というのはとても重要ですね。

DEIステートメントでは「誰もが自分らしく成長し、ポテンシャルを最大限に発揮できる」という言葉にこだわりましたが、これはあくまでパーパスを実践するためのものです。どういう道を進んでも、最後に当社が掲げるゴール=パーパスの実践に貢献するなら、働き方はその人なりでいい。言い換えれば、働き方の個々の多様なスタイルや価値観は、野村の一員である限り、野村のゴールに向かうためでなければならないということです。ですから、働く上での自分のスタイルや考えが、会社のパーパスの実践につながっていますか、と対話することは大切です。
野村の社員は野村グループのパーパスを実践するためにここにいます。ただ、会社のパーパス自体はあまりに大きい。ともすれば漠然としがちなので、自分のやりたいことはそのパーパスからしっかりブレイクダウンする。身近なチームで対話をして、野村グループのパーパスはこれ、うちの部署のパーパスはここ、そして、自分のパーパスもその中にちゃんと入っているかということです。確たる自分が野村という器の中で何ができるかを考えることが大切です。

仲間とのコラボレーションが大きな力に

Q. まずは自分自身のパーパスを考えてみることが大事ですね。

野村は約27,000人の大所帯です。そのなかの一人ひとりには自分らしく取り組める役割が必ずあります。たった一人では大きなディールはできませんが、野村の一員として自分がやりたいことを部署やチームのメンバーと対話をし、コラボレーションしていくなかで大きな成果に繋がっていきます。そして、各マネージャーには、個々人が自分らしく能力を発揮しやすい職場環境を提供するという重要な役割が求められていると私は考えます。
私たちDEI推進室は、社員一人ひとりが自分らしく、ポテンシャルを最大限に発揮して仕事が出来るよう、その後方支援をしていきます。野村の持つ多様な力が組織の力に一層集約されると当社はもっともっといろんなことができるはずです。そうして、DEI推進室要らずの野村になること。それが今の私のパーパスですね(笑)。

中西 康恵 (なかにし やすえ)
野村ホールディングス DEI推進室 室長
関西大学にて地理学を専攻。商業地理への関心から通信販売会社入社、コールセンター配属。職員の採用育成評価に携わる中、専門性を高めたいと豪州メルボルン大学で人材管理修士号を取得。帰国後、採用コンサルティング業務を経て、フィリップス・ジャパンで7年間のHRBP(HRビジネスパートナー)業務を経験。2014年に野村證券入社。HRBPのコーポレート機能のグローバルリードなどを経て、23年4月より現職