「野村」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。野村證券の店舗をイメージする人も多いかもしれません。しかし、野村グループの事業と収益構造は、この数年で大きく変わっています。現在では、人員数と収益の約半分を海外が占める、グローバルな総合金融サービス・グループとなっています。
市場環境に左右されにくい収益構造への転換を進め、2期連続で過去最高益を達成した野村グループ。2030年に向けた目標も上方修正しました。創立101年目の今、その「稼ぐ力」はどこから生まれ、次の成長をどう描いているのでしょうか。
「2026年個人投資家向け説明会」で、グループCEOの奥田健太郎が、フリーアナウンサー・経済キャスターの森本智子さんとの対談を通じて語った内容を、3つのポイントから紐解きます。
対談から見えてきた、今の野村を知るためのポイントは次の3つです。
- 市場環境の影響を受けやすい収益構造から、安定収益を重視した分散型の収益構造へ
- 持続的な成長を株主還元につなげ、1株当たり配当金は3年間で3倍に増加
- グループの総合力を生かし、新たな成長ステージへ
「証券会社の業績は、株式市場の動きによって大きく変わる」そんなイメージを持つ人も少なくないはずです。奥田も、従来のビジネスモデルには、市場環境によって業績の振れ幅が大きくなる面があったと振り返ります。
そこで進めてきたのが、安定して収益を上げられるビジネスモデルへの転換です。
ウェルス・マネジメント部門では、お客様のニーズを起点としたサービス提供体制へ見直すとともに、お客様から資産をお預けいただき、その管理をお任せいただく対価として収益をいただく、「ストック型のビジネスモデル」への転換を進めました。
法人向けのホールセール部門では、お客様との取引を中心としたビジネスに加え、株式やM&Aのアドバイザリーなどに経営資源を配分。リスク管理も強化し、市況の影響を受けやすい収益に過度に依存するのではなく、複数のプロダクトやサービスをバランスよく組み合わせ、収益源を分散することで、成長性と安定性の両立を図りました。インベストメント・マネジメント部門でも資産運用ビジネスを拡大し、安定収益の伸長につなげています。
さらに、奥田が就任当初から掲げているのが、「パブリックからプライベートへ」という方針です。上場株式や債券だけでなく、不動産や実物資産といったプライベート・アセットへ、提供する運用商品の幅を広げています。
安定収益を増やし、リスクをコントロールする。奥田は、こうした取り組みの成果が、2期連続の過去最高益につながったと説明しました。野村グループは2030年に向けた目標を上方修正し、ROE10~12%+、税前利益7,500億円超を掲げています。
ビジネスモデルの変革による業績の拡大は、株主還元にもつながっています。2026年3月期の1株当たり年間配当金は51円。2023年3月期の17円から3倍になりました。
株主還元の基本方針は、次のとおりです。
- 連結配当性向40%以上
- 自己株式取得を含む総還元性向50%以上
利益の50%以上を株主に還元する方針のもと、成長につながる投資機会があれば投資し、そうでなければ、できる限り株主還元を充実させる考えです。
安定配当を基本に成長投資を行い、その投資が新たな利益を生み、持続的な成長が安定的な株主還元を支える――。野村はそんな好循環を目指しています。
また、株価に目を向けると、野村ホールディングス株は、日経平均株価やTOPIXを大きく上回って推移しています。
2021年9月1日を100として配当込みで比較すると、2026年8月26日時点で、野村ホールディングス株は364、日経平均株価は256、TOPIXは234です。
奥田は、この株価パフォーマンスを支えているのは好調な業績だと説明しました。また、野村グループは収益の約半分を海外が占め、日本と海外双方の市場や企業の成長を取り込めるグローバルな企業へと成長してきたと語りました。
野村グループは、業績の安定化を進める一方で、次の成長に向けた「種」をまいてきました。これからは、資産運用を核として、その成果を着実に刈り取っていく段階に入ります。
説明会資料で示された成長戦略は、次の6つです。
- グローバルな資産運用プラットフォームの確立
- アジア・中東での富裕層ビジネスの育成
- 証券・銀行をつなぎ、より高度な資産管理を実現
- ワークプレイス・ビジネスを通じた顧客基盤拡大
- 成長を加速するプラットフォーム戦略
- 総合力――「オール野村」で顧客価値を最大化
なかでも、成長の核に据えているのが資産運用です。
2025年12月には、オーストラリアの金融サービス・グループであるマッコーリー・グループのうち、米国で100年近い歴史と伝統を持ち、パブリック・アセットマネジメント事業※を展開する資産運用会社を買収しました。その運用力と米国での販売ネットワークを活かし、「海外の成長を日本へ」届けるとともに、「日本の魅力を海外へ広げる」ビジネスモデルを追求しています。
この他にも、シンガポールや香港、ドバイを軸とした海外富裕層ビジネス、野村信託銀行を活用した証券と銀行をつなぐサービス、企業の人的資本経営の実現と従業員の資産形成・資産管理の支援を起点とするワークプレイス・ビジネスなどを進めています。
4つの部門や国内外のネットワークを、どのようにつないで成長へ結び付けていくのか。動画では、奥田が具体的な事例や数字を交えながら解説しています。
※ 伝統的資産のアクティブ運用を中心とするアセットマネジメント事業
対談の終盤、奥田は、野村グループについて「お客様のために何ができるかを、ずっと考えてきた会社」だと語りました。金融資本市場を事業の軸としながらも、「証券会社」という枠にとらわれず、お客様のニーズに合ったサービスを提供していきたいと考えています。
その姿勢を象徴するものとして紹介したのが、日本橋にある日本橋野村ビルディング旧館です。外から見た建物の形や名前は残しながら、内部は7階建てから4階建てへと大きく変わっています。
「形とか名前は同じでも、中身を全部変えてですね、それぐらい大きく変化をして、次の100年とか、次のお客様のニーズに合うように常に挑戦しながら変わり続けていくグループでいたいなと思います」
お客様のニーズや市場の変化に合わせて、すばやく行動する。うまくいかなければ、すばやく見直す。そうして変化を続けながら、「稼ぐ力」とサービスの質の両方を高めていく――。奥田は、そんな方向性を示しました。
創立101年目を迎えた野村グループは、これからも新しい挑戦を続けていきます。そうした取り組みや成長戦略について、個人投資家の皆さんに、これまで以上にタイムリーに届けていく考えです。
100年の歴史を大切にしながら、お客様のために中身を変え続ける。今回の対談からは、そんな姿勢が伝わってきます。ここで紹介しきれなかった人材やAI活用を含む戦略・取り組みについても、ぜひ森本さんと奥田の対談でご覧ください。
登壇者
- フリーアナウンサー・経済キャスター 森本智子さん
- 野村ホールディングス 代表執行役社長 グループCEO 奥田健太郎