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創業者である野村徳七が創立当初に目指した、欧米と肩を並べるリサーチ力は100年が経った今どうなっているのか。海外で活躍するリサーチャーから、韓国リサーチヘッド兼アジアエネルギー リサーチヘッドのシンディ・パク(韓国)、欧州担当チーフ・エコノミストのジョージ・バックリー(英国)、インドおよびアジア担当チーフ・エコノミストのソナル・ヴァルマ(シンガポール)の3人に、野村のリサーチの「らしさ」や強み、そして自身の仕事へのこだわりを聞きました。

シンディ・パク(韓国)

信頼性が高く、堅実で、一貫性がある

ノムラ・ファイナンシャル・インベストメント・コリア 韓国リサーチヘッド兼アジアエネルギー リサーチヘッド Cindy Park(シンディ・パク)
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ノムラ・ファイナンシャル・インベストメント・コリア 韓国リサーチヘッド兼アジアエネルギー リサーチヘッド Cindy Park(シンディ・パク)

Q. リサーチャーになろうと思ったきっかけは何ですか?

エクイティリサーチ・アナリストになる前は、サムスンのマーケティング部門で、マーケット情報の収集や分析を通じて企業の戦略の意思決定に役立つ提案をしたり、投資家向け広報をしていました。5〜6年その仕事をした後に、キャリアを変え、エクイティリサーチ・アナリストになりました。より独立した環境で仕事がしたかったのと、より大きな視点で世界を見たかったからです。加えて、リサーチャーなら育児と仕事の両立など、ワークライフバランスが取れそうだとも思いました。実際は世界中を頻繁に飛び回らなくてはならず、体力的にきつい面もありましたが、やりたかったことはほぼ実現できています。

Q. リサーチャーとしてのやりがいは、どんなところですか?
 

一番は、自分の見方を文章で表現し、それについてお客様と意見交換できるところです。具体的には、レポートを通じて担当している企業や経済、業界のトレンドについて自分の見方を提示して議論できるだけでなく、リサーチャーとして独立した立場で、株式という資産を公正に評価できます。また、お客様に示唆や情報を提供し、投資家の考えに耳を傾けることを、常に心がけています。

もうひとつ、担当する企業が市場における自らの立場を理解し、株主の価値を毀損する可能性のある望ましくない慣行をやめるよう促すことです。私たちエクイティ・アナリストは一人あたり約20社の企業を担当しています。私は複数の業界をまたいで企業をカバーしていますが、企業は私たちが何を考え、市場が彼らをどう見ているのかを知りたがっています。信頼される独立した声としてそうしたメッセージを届けることも、自分の責任だと感じています。

Q. 質の高い情報を提供するために心がけていることはありますか?
 

ニュースは常にチェックしています。朝は5時半に起きて、重要なヘッドライン、マクロ経済、業界、政治などのニュースをまず確認します。そのうえで定期的に企業や業界の専門家と会う予定をたて、時にはオフィスでの会議以外でも会って情報交換して、「現場の声」も聞く。彼らと定期的に会う時間を確保することも重要だと考えています。

アナリストとして駆け出しの頃は、お客様を増やしたくて、お客様と過ごすことに多くの時間を割いていました。お客様のニーズを理解するためには、お会いすることが大事だと思っていたからです。もちろん、いまでもそれは大切にしていますが、時が経つにつれて、レポートや情報、洞察の質を高めることに、もっと多くの時間を使いたいと思うようになりました。そうすることで、お客様にとって頼りになる人になり、自然とより多くのお客様が集まってくださると感じているからです。

最近は本当に色々な情報があふれていて、誰もが簡単に情報を得られる時代です。だからこそ、そういった情報の持つ本質的な意味を見極める力が必要だと思います。

Q. 野村のリサーチは、他の投資銀行と比べてどんな特徴がありますか?

 

「野村のリサーチは日本の自動車や電子製品のようだ」。これはある時、アジアのお客様から言われた言葉です。「流行の最先端ではないが、信頼性が高く、堅実で、一貫性がある」と。この言葉は私たちのリサーチスタイルをよく表していて、信頼できる質の高いリサーチを継続的に提供している証であり、私たち野村のリサーチの大きな強みです。

プロフィール

Cindy Park(シンディ・パク)
ノムラ・ファイナンシャル・インベストメント・コリア
韓国リサーチヘッド兼アジアエネルギー リサーチヘッド
2004年、野村に入社。現在、韓国のエクイティリサーチのヘッドを務める。エクイティ戦略のリサーチを行うとともに、アジアのエネルギー分野の調査も担当。エネルギー分野のアナリストとして20年の経験を有する。以前は化学品のトレーダー・マーケターとして6年間務めた。

ジョージ・バックリー(英国)

現地でタイムリーに日本経済や通貨のことを聞ける

ノムラ・インターナショナルplc チーフ・エコノミスト(欧州担当) George Buckley(ジョージ・バックリー)
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ノムラ・インターナショナルplc チーフ・エコノミスト(欧州担当) George Buckley(ジョージ・バックリー)

Q. なぜエコノミストになろうと思ったのですか?
 

私は経済学博士として、以前は学問としての経済学に長く携わってきましたが、それをもっと実社会で活かし人の役に立ちたいと思い、25年ほど前に金融業界に転身しました。野村に来てからは8年以上になります。野村のような投資銀行ほど現実の世界を体感できる場所はあまりなく、ここでは、経済やインフレ、世界中の多くの資産価値を左右する金利の動向を予測しようとしています。これまで学んだアカデミックな経済学をリアルな環境で応用できるのは非常に楽しいです。

Q. エコノミストとしてこだわってきたことは
 

経済学は技術的で難解なテーマになりがちなので、お客様にお話をするときには、どうすれば私の話に興味を持ってもらえるかを常に考え、「面白いストーリー」や「役に立つ話」など、創意工夫しながら伝えてきました。そして、これまでのエコノミストとしてのキャリアを通じて、「結果だけでなく過程を説明する大切さ」を学びました。お客様は、皆さん「なぜその結論に至ったのか」を理解したがっているので、学校の数学さながら、計算の過程をしっかりと示すことにも常にこだわっています。

Q. 欧州野村のリサーチが他社と差別化していることは?
 

ポッドキャストを毎週配信しています。「MacroBrew」というシリーズは、コーヒーを片手にリラックスしながら、少し深い経済分析や予測の話を聞けるというのがこの番組のコンセプトです。お客様から「土曜の朝に犬の散歩をしながら聴いている」と言われたときは、狙い通りで嬉しかったですね。
 

また、データへの迅速な対応も大事にしています。例えば今朝は、イギリスのインフレの数字について素早くコメントを書いたのですが、このように速報性を重視したレポートを書くこともあれば、よりじっくりと考察をして、ほかの人が見逃しがちな細かいポイントまで掘り下げたレポートを仕上げることもあります。

Q. 日本に本社があることでの「らしさ」、アジアが軸足の強みは感じますか?
 

リサーチはアジアに重きを置いています。日本のマクロ経済や金融市場を担当する日本人リサーチャーが多く、海外にも在住しています。また、アジア全体のエクイティリサーチも非常に充実しています。

注目すべき点の一つは、日本だけでなく、海外に居る日本人リサーチャーも、日本のマクロ経済や金融市場について日本人ならではの視点で分析を提供していることです。彼らはほかの人にはない市場への深い理解を持っていますし、異なるタイムゾーンをまたいで効果的に働いています。例えば、ロンドンにいる日本人の為替ストラテジストは、G10通貨をカバーしながら特に日本円に注力しています。

また、現地には現地に根付いたリサーチャーがいることも強みです。私自身はイギリスのエコノミストとしてイギリスを担当しているのですが、この地に住んで働いているため、お客様がイギリス経済のことを聞きたいときには私と話をしたいと思うことが多いのではないかと思っています。また、当社の欧州中央銀行(ECB)担当者はヨーロッパ出身で、ECBでの勤務経験もあります。これらは野村が提供できる大きな強みだと思います。

プロフィール

George Buckley(ジョージ・バックリー)
ノムラ・インターナショナルplc チーフ・エコノミスト(欧州担当)
マーケット・エコノミストとして25年以上の経験を持ち、以前はドイツ銀行に勤務。
ブリストル大学で博士号(住宅市場)および理学修士号を取得し、同大学でマクロ経済学と計量経済学の講義も担当した。バンガー大学で経済学・金融分野の学士号も取得。
著書に『What You Need to Know About Economics』(カプストーン社刊)があり、1400人以上の会員を擁するプロフェッショナル・エコノミスト協会の会長を務めている。
 

ソナル・ヴァルマ(シンガポール)

リサーチャー同士、アジアと欧米も連携する 強い協力体制

ノムラ・シンガポール・リミテッド チーフ・エコノミスト(インドおよびアジア担当) Sonal Varma(ソナル・ヴァルマ)
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ノムラ・シンガポール・リミテッド チーフ・エコノミスト(インドおよびアジア担当) Sonal Varma(ソナル・ヴァルマ)

Q. なぜエコノミストになろうと思ったのですか?
 

大学時代からマクロ経済に興味がありました。社会人になって2つ目の仕事で経済調査をしていた時に、市場に関するリサーチにも関わるようになったんです。私は、変化に富んだスピード感のある環境で働くのが好きなので、マクロ経済と市場を組み合わせたリサーチの仕事は、すごく合っていました。

Q. これまで一貫して力を入れてきたことは?

 

主に2つあります。まず、マクロ経済のような大きな視点のテーマを深く掘り下げること。もう1つは、マーケットや投資家の見方と私たちの予測とのズレ、ギャップを見つけることです。このギャップにこそ投資機会があるので、見つけた時はワクワクします。ギャップ=市場で適切な値付けがされていないということですから、お客様には価格に織り込まれていないそのギャップを伝え、なぜギャップが生まれているのかを説明したうえで、どういったポジションを取るべきかを提案しています。

Q. 考え方や仕事の進め方で大切にしていることは?

 

多くの情報から意味あるシグナル(情報)を見つけ出すことですね。注目すべきシグナルは一つではないので、正しいシグナルを結びつけて一貫したテーマにまとめるのも大切です。また「確固たる見解には、正確なリサーチの裏付けが必要」、「世の中の大多数の意見(コンセンサス)との違いを恐れない」といった意識も大切にしています。リスクを取って、「なぜそう考えるのか」を含めて自分の考えをはっきり主張するようにしています。

Q. 質の高いリサーチのために工夫していることはありますか?
 

私は常に世の中の変化の一歩先を行くよう心がけています。また「正しい問いを立てる」ことも意識しています。そのためには「お客様は何を知りたいのか?」を考える。これは私たちがリサーチを行うときの基本的な姿勢です。

もう一つ、「〜すべき(should)」と「〜するだろう(would)」との違いも重要です。私たちは中央銀行の動向などを注視していますが、お客様が知りたいのは「中央銀行は本来どうすべきか(should)」だけでなく、「何をしそうか(would)」ですからね。

Q. 野村のリサーチの特徴、あるいは他の投資銀行と比べて優れている点はなんだと思いますか?
 

私たちのリサーチは、強さと信頼性の高さが強みです。特にアジアについては、カバーする経済や市場に関してかなり詳細な情報を提供できていて、お客様からも高く評価されています。また、私たちには強い協力体制があり、エコノミストとストラテジスト、あるいはアジアと欧米のエコノミストが連携して調査を行うことも少なくありません。こうしたチームの連携も野村らしい特徴です。

プロフィール

Sonal Varma(ソナル・ヴァルマ)

ノムラ・シンガポール・リミテッド チーフ・エコノミスト(インドおよびアジア担当)

ICICI銀行、格付け機関のCRISIL、およびリーマン・ブラザーズでエコノミストを歴任、2008年に野村に入社。経済動向の分析および経済レポートの作成に従事する。2012年から2019年まで『The Asset』のインドリサーチ部門で1位、2022年と23年にはアジア全域のリサーチ部門で1位に選出。

デリー・スクール・オブ・エコノミックス(Delhi School of Economics)にて経済学の修士号取得。