
2025年4月1日に、東京の虎ノ門ヒルズで野村グループの入社式が行われました。金融業界の入社式といえば、昔から、きちっとしていて厳粛でお堅いのが当たり前。野村もかつてはまさに絵に描いたようなそのままの雰囲気で、ステージ上にはずらっと並ぶ役員たち。新入社員総代が前に出て、社長と対峙、そして最後は全員での社歌の合唱でした。ところが・・・今年は随分と様子が違いました。
この変化のきっかけを作ったのが、3年前から人材開発部の採用グループ長を務めている田頭直樹でした。チームのみんなで意見を出し合い1年前からガラリと変えたという入社式は、登場役員たったの2人。新入社員紹介はオモシロげな(?!)振りで踊るアバターによるもの。そして代々歌われてきた社歌もありませんでした。目指したのは「厳かながらも和やかで温かみのある、これからにワクワクできる入社式」という田頭。話を聞くと、入社式を変えた背景にはなかなか深いワケがありました。

Q. 田頭さんが採用グループ長になってから、今回で何回目の入社式を迎えますか?
この4月が3回目です。昔ながらの入社式を一度やってみて、その時に変えてみたいと思いました。
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- 野村證券 人材開発部 採用グループ長 田頭直樹
Q. どんなところが気になったのでしょうか?
野村の入社式は、役員が全員参加で、前に整然と並んで、厳かにやるのが昔からの伝統でした。20人ほどの役員一人ひとりが紹介を受けてお辞儀をしていくんです。これがいいという方ももちろんいます。ただ、人材開発部に来て感じたのは、世間が思う野村のイメージと、今のリアルな野村とのギャップです。世間のイメージはバブルの頃から止まったまま。堅くて、高圧的で、男性はいまだにみんなオールバックだと思われてますからね(笑)。このイメージを変えるには、まず入社式だけでもできる限り柔らかい方に変えたいなと。そこで、もっとアットホームな雰囲気にして、新入社員と奥田グループCEOが双方向で話せるものにしようと提案したんです。
Q. そのギャップは、採用の過程での、学生の皆さんとの会話で知ったのですか?
そうですね。人材開発部に来るまで、私はウェルス・マネジメント部門、いわゆる支店の営業をずっとやっていました。日本の多くの方が抱く野村證券のイメージは、ウェルス・マネジメントのイメージだと私は思っているのですが、私が2005年に入社してからの20年でその現場はどんどん変わってきていました。
昔と比べると、今の現場は若い社員たちの意見もこれまで以上に多く飛び交っていますし、みんな本当にお客様のためを思って仕事をしています。「ビジネスは顧客と共にしか大きくなり得ない」というのを体現しているのが今の野村のビジネスです。でも、こうした本当の姿を知っているのは、ほぼ当社の社員と直接お付き合いのあるお客様だけで、そうでない世間一般の方々には全く理解されていなくて、会社が大きく変わったと思っているのは自分たちだけだったんです。

結局、変わってきたことを外に発信できていないんだなと。そこで採用を担当するチームとしてできることは何かを考えた時、まず目の前の入社式を今の野村らしい柔らかさに変えようと。提案すると上層部も同意見で、「今までの堅いイメージの真逆でいこう!」ということになったんです。
Q. 具体的にはどこを変えたのですか?
入社式の主役は新入社員です。だから、役員全員に出席してもらう必要はないかなと(笑)。また、新人たちにとって会社の顔といえばやっぱりCEOなんです。ですからグループCEOの奥田さんが登場すれば、新入社員に対する印象付けとしては十分だと考えました。そして、グループCEOと新入社員がその場で、双方向で話せたらきっと楽しいだろうと思い、CHRO(最高人事責任者)である尾崎さんも一緒にQ&Aトークセッションをすることにしました。

次に、我々も入社式以外では歌ったことのない社歌。以前は必ず全員で歌っていたんですが、入社式を新入社員の記憶に残るイベントにするには他にできることがあると思い、その時間は「ようこそ野村へ」という動画を流すことにしました。これはグローバルな野村を知ってもらうために世界の各拠点にVTRを撮ってもらって編集したものです。さらに、新入社員一人ひとりをアバターにして座右の銘と一緒に紹介。これは当社のデジタル技術の活用を担うデジタル・カンパニーに作ってもらいました。こうして、少なくとも「ザ・金融」のイメージは排除して、厳かな気持ちになるより、これから働くことにワクワクできる入社式を目指しました。

Q. 田頭さんをそこまで動かしたものは何だったのでしょう?
どうなんでしょう。まあ何だかちょっと会社がかわいそうだと思ったんです。世間の認識と実際の姿があまりに違っているので…。誰かが「今の野村は全然違うんだよ」って伝えてあげないと、これから先もずっと変わらないよなと。それで、自分ができることとして、今ある本当の姿をちゃんと伝えて理解してもらうぐらいはやってみよう、今までのイメージを上書きしてもらえる情報を発信しようと思ったんです。そうすれば、結果として、野村の採用における人気や競争力にもつながりますからね。
幸いなことに、野村は今年で創立100年を迎えます。そうしたなか、学生の皆さんには「野村は、入社すれば早く成長させてくれる会社」というブランドイメージは強く持っていただいているようで、実際に多くの学生さんが毎年エントリーしてくれています。ですから、そこに加えて、「やりたいことを何でも提案できる、自由な空気の野村」という今の姿も認識してもらえるよう、これからもいろんなことをやっていきたいと思っています。
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- 入社式を支える人材開発部のメンバー
Q. 最後に、入社した新入社員の皆さんへも何かひと言お願いします。
ひと言? 「ようこそ野村へ!」じゃないですか(笑)。

Q. 入社式の準備、どうでしたか?
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- 野村證券 人材開発部
岡本 和(左) 岡野花奈(右)
私たちは、厳かながらもポップでインタラクティブな入社式にしたいという想いで、デジタル・カンパニーのメンバーと一緒にコンテンツを作りました。当日インパクトがあったのはやはりアバターでの新入社員の自己紹介をする動画です。新入社員の皆さんに事前に作成いただいたアバターが、面白くそして不思議なダンスを繰り広げるこのシーンは、野村の持つデジタル技術やユーモアなど、新しい一面を見せられたと思います。


一方、大変だったのは新入社員全員の367人分のアバターの回収です。期限までに作成いただいたアバターを提出いただけないとその新入社員が動画に登場できなくなってしまうため大問題。2人で手分けしながら個別に連絡をとり、新入社員の都合にも配慮しつつ、時には心を鬼にして(笑)必要なことを伝えました。当社にはどんどん新しいことをやろうという空気があるので、準備は大変ながら楽しい日々でした。会場でも参加者の反応があって嬉しかったですし、何より無事に終わることができて、心からホッとしています。